世界の乗り物酔いによる悪心、嘔吐の市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界の乗り物酔いによる悪心、嘔吐の市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Nausea and Vomiting Induced by Motion Sickness Epidemiology Forecast; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
本レポートは、乗り物酔いによって誘発される悪心・嘔吐(Nausea and Vomiting Induced by Motion Sickness)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。乗り物酔いは、移動中に内耳の前庭系、視覚、体性感覚から脳へ入る情報が一致しないことで生じる感覚不一致を背景とし、悪心、嘔吐、めまい、冷汗などの自律神経症状を引き起こす。Mahdi Mohammed Alturaikiらの2025年の報告では、世界の成人の約45~74%が生涯に少なくとも一度は乗り物酔いを経験するとされる。Seattle Children’s Hospitalによると、曲がりくねった道路を走る車の乗客では約25%に症状が生じ、荒れた海のような強い刺激環境では90%超が症状を経験する可能性がある。調査会社は、乗り物酔いが自動車、船舶、航空機、鉄道、シミュレーターなど幅広い移動・仮想環境で発生し、依然として非常に一般的な症状群であるとしている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、年齢、性別、タイプ、診断患者数、曝露環境などの疫学動向を分析している。
乗り物酔いの基本病態は、脳が受け取る感覚情報の不一致である。たとえば自動車の車内で読書をしている場合、目は周囲が静止していると認識する一方、内耳の前庭器官は加速・減速やカーブによる身体の動きを感知する。この視覚情報と前庭情報の食い違いが脳内の平衡感覚処理を乱し、自律神経反応として悪心、嘔吐、発汗、めまいなどが誘発される。
主な病型には船酔い、飛行機酔い、車酔い、シミュレーター酔いなどがある。原理は共通するが、曝露される動きの種類や強度、時間が異なるため、発症頻度にもかなりの差がみられる。
乗り物酔いは非常に一般的であり、Nicole Jensenらの2026年の報告では、ほぼすべての人が生涯のどこかで一度は経験する可能性があるとされる。ただし、曝露を繰り返すことで順応や耐性が生じ、症状が軽減していく人も多い。このため、「生涯に一度でも経験する割合」と「日常的・反復的に強い症状を起こす割合」は区別して考える必要がある。
年齢は感受性を大きく左右する。Nicole Jensenらによると、思春期前の小児では約35~43%に乗り物酔いがみられ、最も感受性が高い年齢は9~10歳頃とされる。小児期、とくに学童期は乗り物酔いのピークとなる重要な患者群である。
一方、2歳未満では乗り物酔いは比較的まれである。その後、前庭系と視覚系の統合が発達するにつれて感受性が高まり、学童期にピークを迎える。思春期以降は徐々に減少する傾向がある。
青年・若年成人でも一定の負担が残る。Nicole Jensenらの報告では、青年または若年成人の約25%が影響を受けるとされる。また、18~28歳の若年成人562人を対象としたAmitabh Kishor Dwivediらの2024年の研究では、71.4%が軽度、27.8%が中等度、0.9%が重度の乗り物酔い感受性を示した。
この若年成人研究では、ほぼすべての対象者が何らかの感受性を持っていたように見えるが、これは一般人口全体の発症率ではなく、特定の研究集団における重症度分布として解釈する必要がある。71.4%、27.8%、0.9%という数字を一般成人の有病率へそのまま適用することはできない。
成人では年齢とともに感受性が低下する。Nicole Jensenらによると、30歳未満の成人では約14%、60歳以上では約7%に乗り物酔いがみられるとされる。また、50歳以降では新たな症例が比較的少ないとされ、加齢とともに発症頻度が低下する傾向がある。
このため、乗り物酔いの疫学は他の多くの慢性疾患とは異なり、高齢化によって単純に患者数が増えるとは限らない。むしろ小児、青年、若年成人に感受性が高く、高齢になるほど頻度が低下するという年齢パターンを示す。
遺伝的素因も重要である。Seattle Children’s Hospitalによると、親の一方が乗り物酔いを起こしやすい場合、その子どもの約50%が同様に乗り物酔いを発症する可能性があるとされる。このことから、前庭感受性や感覚統合の個人差には遺伝的要因が関与すると考えられる。
ただし、遺伝要因だけで決まるわけではなく、移動環境、視覚刺激、頭部運動、曝露時間、過去の経験、順応などが大きく影響する。したがって、同じ人でも状況によって症状の有無や重症度が変わる。
曝露環境による差は非常に大きい。Nicole Jensenらによると、船酔いは最も一般的なタイプで、船舶乗客の最大約25%に発生する。一方、車酔いは約4%、鉄道による乗り物酔いは約0.13%、商用航空機では1%未満とされる。
この違いは、日常的な交通手段ごとの「通常条件」における推定値と考える必要がある。Seattle Children’s Hospitalの「曲がりくねった道路では約25%」「荒れた海では90%超」という数値は、より強い刺激環境での発症率を示しており、通常条件における車酔い4%や船酔い25%と矛盾するものではない。
つまり、乗り物酔いは固定的な有病率を持つ疾患というより、個人の感受性と「どの程度強い動きに曝露されたか」の組み合わせによって発症確率が大きく変化する症状群である。穏やかな移動では症状のない人でも、荒れた海や激しい揺れでは症状を起こす可能性がある。
国別では、米国に大規模な潜在患者集団が存在する。Vanda Pharmaceuticalsによると、米国成人の約25~30%、人数にして約6,500万~7,800万人が一般的な移動手段で乗り物酔い症状を経験するとされる。
また、米国人口の約5~15%では、重度かつ反復性の症状がみられ、日常機能への影響が大きいとされる。したがって、一時的に軽い悪心を経験する人口と、頻繁に予防薬や治療を必要とする高感受性人口の間には大きな差がある。
世界的には最大約3分の1の人が高い感受性を持つ可能性があるとされる。ここでも「高感受性」と「実際に特定の移動で症状を起こした割合」は同一ではないため、疫学データを解釈する際には注意が必要である。
インドでは、18~28歳562人を対象とした研究で、軽度71.4%、中等度27.8%、重度0.9%という感受性分布が報告されている。これはインドの若年成人において乗り物酔いが広く認められる可能性を示しているが、全国人口の有病率とは区別して理解する必要がある。
ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本については、提示資料では詳細な国別数値は示されていない。ただし、欧州や日本でも同様の年齢・曝露依存パターンが報告されているとされ、乗り物酔いは特定地域に限定された問題ではない。
特に日本では、鉄道利用が多い一方、鉄道による乗り物酔いの発症率は比較的低いとされる。しかし、自動車、船舶、航空機だけでなく、仮想現実やシミュレーターなどの新しい視覚刺激環境でも感覚不一致が起こるため、今後の患者層は従来の旅行者だけに限定されない可能性がある。
市場・疫学上の特徴として、乗り物酔いは診断された慢性疾患患者数を数えるタイプの病態ではなく、曝露時に症状が生じる非常に大きな潜在人口を持つ。このため、「生涯経験者」「現在感受性を持つ人」「反復的な症状を持つ人」「重症患者」「医療機関を受診する人」を分けて考える必要がある。
たとえば、成人の45~74%が生涯に少なくとも一度経験するという数値と、米国成人の25~30%が通常の移動で症状を経験するという数値は、測定している対象が異なる。また、5~15%の重症・反復例はその中でも特に治療需要の大きい集団である。
治療の基本は、症状が発生してから抑えることと、旅行前に予防することの両方である。乗り物酔いは曝露条件を事前に予測できる場合が多いため、予防的治療の重要性が高い。
薬物療法では、ジメンヒドリナートやメクリジンなどの抗ヒスタミン薬が一般的に用いられる。これらは前庭系から嘔吐中枢へ伝達されるシグナルを抑え、悪心、めまい、嘔吐を軽減することを目的とする。
抗コリン薬であるスコポラミンも重要な選択肢である。特に旅行前に予防的に使用し、前庭刺激に伴う自律神経症状を抑えることを目的とする。
悪心・嘔吐そのものが強い場合には制吐薬が使用されることもある。ただし、乗り物酔いの病態では単純な胃腸症状ではなく前庭系からの入力が中心にあるため、薬剤選択では前庭性悪心に対する効果が重要になる。
非薬物療法も有効である。頭部運動をできるだけ少なくする、視線を安定した地平線や遠くの固定物へ向ける、揺れの少ない座席を選ぶといった方法によって感覚不一致を減らすことができる。
自動車では進行方向を見る、船では揺れの比較的小さい中央部を選ぶなど、移動手段ごとに感覚刺激を小さくする工夫が重要となる。読書やスマートフォン画面を見続けることは、視覚と前庭入力の不一致を強める可能性があるため、症状の出やすい患者では避けることが有用である。
換気を良くすること、水分を適切に摂取することなども支持療法として挙げられる。これらは根本的に感覚不一致を解消するものではないが、悪心や不快感を軽減するうえで役立つ場合がある。
また、同じ動きに段階的・反復的に曝露されることで順応が起こり、症状が軽減することがある。Nicole Jensenらが、多くの人で時間とともに耐性が形成されるとしているのはこのためである。
一部の高感受性患者では前庭リハビリテーションが検討されることもある。前庭刺激への適応能力を高め、感覚不一致に対する反応を軽減することを目的とする。
市場の観点では、乗り物酔いは非常に大きな潜在利用者数を持つ一方、症状が一過性であり、医療機関を受診せず市販薬などで自己管理する人も多い。そのため、疫学上の患者数と医療市場で治療を受ける人数には大きな差がある。
特に治療市場の中心となるのは、繰り返し旅行する人、強い症状を持つ人、船舶や航空など職業的に動揺環境へ曝露される人、あるいは小児など感受性の高い患者群である。
また、シミュレーターや仮想環境に伴う乗り物酔いも病型として含まれているため、従来型の旅行環境だけでなく、視覚・デジタル環境の変化も将来の症状負担に影響する可能性がある。
全体として本レポートは、乗り物酔いによる悪心・嘔吐を「世界の多くの人が生涯に一度は経験し、特に小児・若年者と強い動揺環境への曝露者で頻度が高くなる、非常に一般的な前庭性症状群」と位置づけている。成人の生涯経験率は約45~74%とされ、極端な動揺環境では90%以上が症状を起こす可能性がある。
年齢では9~10歳頃が最も感受性が高く、思春期前の35~43%、青年・若年成人の約25%が影響を受ける一方、30歳未満成人では約14%、60歳以上では約7%と加齢に伴って低下する。したがって、典型的な疫学パターンは「小児期に上昇し、学童期にピークを迎え、その後徐々に低下する」というものである。
曝露別では、通常条件で船酔いが最大約25%、車酔い約4%、鉄道約0.13%、商用航空機では1%未満とされる一方、曲がりくねった道路では約25%、荒れた海では90%超に達する可能性がある。このことから、発症率は移動手段だけでなく動きの強度に大きく依存する。
米国では成人の約25~30%、約6,500万~7,800万人が一般的な移動中に症状を経験するとされ、約5~15%には重度・反復性の症状が存在する。インドの若年成人研究でも高い感受性が報告されており、欧州や日本でも同様の傾向があるとされる。
2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、人口高齢化そのものより、旅行・交通機会、船舶や航空機への曝露、若年人口の移動行動、仮想・シミュレーター環境の利用、予防薬へのアクセスなどが症状発生・治療需要を左右する可能性が高い。また、一般的な乗り物酔いは医療機関で診断されないことが多いため、市場予測では診断患者数だけでなく潜在的な自己治療人口も重要となる。
したがって、今後の管理における中心的課題は、感受性の高い小児・若年者や反復性患者を把握すること、旅行前に抗ヒスタミン薬やスコポラミンなどを適切に予防使用すること、視線や座席位置、頭部運動の調整によって感覚不一致を減らすこと、そして重症例では薬物療法と前庭適応・リハビリテーションを組み合わせることである。2026~2035年は、乗り物酔いを単なる一時的な旅行不快症状として扱うのではなく、個人の感受性、年齢、遺伝背景、曝露環境を踏まえて予防的に管理し、悪心・嘔吐による旅行・日常機能への影響を最小限に抑えることが、臨床・市場双方の主要テーマになるとまとめられる。
※目次構成
01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件
02
エグゼクティブサマリー
03
乗り物酔いによる悪心・嘔吐市場概要(8主要市場)
3.1 乗り物酔いによる悪心・嘔吐市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 乗り物酔いによる悪心・嘔吐市場の予測市場規模(2026年~2035年)
04
乗り物酔いによる悪心・嘔吐疫学概要(8主要市場)
4.1 乗り物酔いによる悪心・嘔吐疫学状況(2019年~2025年)
4.2 乗り物酔いによる悪心・嘔吐疫学予測(2026年~2035年)
05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断
06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因
07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 8主要市場における乗り物酔いによる悪心・嘔吐疫学状況(2019年~2035年)
08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における乗り物酔いによる悪心・嘔吐疫学状況(2019年~2035年)
09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における乗り物酔いによる悪心・嘔吐疫学状況(2019年~2035年)
10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける乗り物酔いによる悪心・嘔吐疫学状況(2019年~2035年)
11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける乗り物酔いによる悪心・嘔吐疫学状況(2019年~2035年)
12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける乗り物酔いによる悪心・嘔吐疫学状況(2019年~2035年)
13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける乗り物酔いによる悪心・嘔吐疫学状況(2019年~2035年)
14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における乗り物酔いによる悪心・嘔吐疫学状況(2019年~2035年)
15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける乗り物酔いによる悪心・嘔吐疫学状況(2019年~2035年)
16
患者経路
17
治療課題および未充足ニーズ
18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察
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