【実際に会社へ連絡された】「会社にばらす」「親に言う」は脅迫?実行された後にできる法的対応を弁護士が解説

「会社にばらす」「親に全部話す」「職場に連絡する」――交際や不倫、金銭をめぐるトラブルでは、このような言葉でプレッシャーをかけられるケースがあります。
さらに深刻なのが、「言われただけ」ではなく、実際に勤務先や家族へ連絡されてしまったケースです。会社に電話された、上司に事情を話された、実家に手紙が届いたなど、すでに相手が行動に移してしまった場合、「もう止めることはできない」「今さら警察や弁護士に相談しても遅い」と考えてしまう方も少なくありません。
しかし、実際に連絡された後でも、問題になった行為について法的な対応を検討できる場合があります。
そもそも「会社にばらす」「親に連絡する」という発言は、どのような場合に脅迫や恐喝、強要などの問題になるのでしょうか。また、実際に会社や家族へ伝えられてしまった場合、名誉毀損やプライバシー侵害などを理由に責任を追及できるのでしょうか。
本記事では、交際・不倫・男女関係・金銭トラブルなどで実際に情報を暴露されてしまったケースを想定し、
①脅迫などが成立する可能性、
②会社に連絡された場合、
③家族に連絡された場合、
④慰謝料などの民事上の対応、
⑤警察への相談や刑事手続、
⑥実行直後にしておきたいこと
について、弁護士が解説します。
実行されたからといって、告げた行為の評価が消えるわけではない
脅迫罪(刑法222条1項)は、相手やその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に害を加えることを告げ、相手を怖がらせるおそれがある場合に問題となります。法定刑は2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。
ここで押さえておきたいのは、これが「告げた」時点で問題になる犯罪だという点です。予告された内容が実行されたかどうかは、成立に必要な要素ではありません。実行されてしまったから告げた行為が不問になる、という関係にはならないということです。
また、「言われたくなければ金を払え」という形で金銭が結び付けられていれば恐喝(刑法249条)が、退職や別れることなど金銭以外の行為を求められていれば強要(刑法223条)が、それぞれ別に問題になり得ます。これらも要求を告げた時点で評価される部分があり、実行の有無だけで結論が決まるものではありません。
そのうえで、実行された場合には、告げた行為とは別に、伝えた行為そのものの責任が重ねて問題になります。
実行された後の作業は、二つに分かれる
実行された後にやるべきことは、性質の異なる二つの作業に分かれます。
一つは、伝わった先で起きることへの対処です。会社であれば事情の確認や処分の検討、家族であれば関係の立て直しや、そこから先へ話が広がることの防止がこれにあたります。
もう一つは、伝えた行為の責任を問うことです。損害賠償の請求や、刑事手続の検討がこれにあたります。
この二つは、相手も時間の流れも違います。混ざったまま進めると、目の前の対応に追われているうちに、もう一方に付いている期間の制限を過ぎてしまうことがあります。まず切り分けたうえで、それぞれに手を付けるのが現実的です。
会社に伝えられた場合に起きること
会社が知った以上、事実確認のための聴取が行われることがあります。
前提として、私生活上の行為が、それだけで直ちに懲戒の対象になるわけではありません。裁判例では、私生活上の行為を理由に処分するには、行為の性質や本人の職務上の地位などを総合して、会社の社会的評価に及ぼす影響が相当重大であると客観的に評価できる場合であることを要する、という枠組みが示されています。加えて、処分には就業規則にあらかじめ定めがあり、それが周知されていることも前提になります。
もっとも、次のような接点があると、評価が変わり得ます。
勤務時間中のやり取りや、会社の端末・メールが使われていた
相手が同じ職場の人、あるいは取引先の関係者である
職務上の立場が関係している
また、伝えられた内容に事実でない部分が含まれている場合は、別の問題が生じます。虚偽の情報を広めたり、だます手段を用いたりして人の信用を傷つけ、あるいは業務を妨げた場合には、信用毀損・業務妨害罪(刑法233条)が問題になり得ます。
なお、役員や従業員が広く閲覧できるアドレス宛にメールを送るといった態様については、事実を公然と示したものと評価し、名誉権とプライバシーの侵害を認めた裁判例があります。宛先を誤って送信した事案でも、送信前の確認を怠った点に重大な過失があるとされ、責任が認められた例があります。
親や家族に連絡された場合に起きること
家族に直接伝えられた場合、その事実を取り戻す手続は用意されていません。インターネット上に投稿された場合であれば、事業者に対する削除の申出という道筋がありますが、電話・手紙・対面で直接伝えられた場合は、間に事業者が存在しないため、その枠組みには乗りません。
ただし、手続がないことと、責任が生じないことは別です。裁判例では、不貞の事実を記載したはがきを相手の父親に送った行為について、社会的評価を低下させるものとして名誉毀損にあたり、あわせてプライバシーの侵害にもあたるとされた例があります。宛先が一人であっても、民事上の責任が認められる場面はあるということです。
家族に伝えられた場合に注意したいのは、そこで止まらないことがある点です。事情を知った家族が、確認のために相手へ連絡を取る、あるいは勤務先に問い合わせるといった形で、伝わる範囲が結果的に広がることがあります。まずは、家族の側にも「こちらから連絡はしない」と伝えたうえで、窓口を一つに絞るのが安全です。
伝えた側の責任は、どこまで問えるのか
民事では、他人の社会的評価を低下させ、あるいは私生活上の情報を明かした行為について、不法行為(民法709条)として損害賠償を請求できる場合があります。精神的な苦痛に対する賠償は民法710条が根拠となり、事案によっては名誉を回復するための措置(民法723条)が問題になることもありますが、私的なやり取りの中で行われた場合には、この措置が用いられる場面は限られます。
刑事では、公然と事実を示して人の名誉を傷つけた場合に名誉毀損罪(刑法230条1項)が問題となり、法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。ただしこの罪は告訴がなければ起訴できず、告訴は犯人を知った日から6か月以内という制限があります。実行された後に動くのであれば、この期間は意識しておく必要があります。なお、プライバシーの侵害それ自体を処罰する規定は置かれていません。
もう一点、誤解の多いところがあります。自分の側に不貞などの責任がある場合でも、そのことと、相手が暴露した行為の責任とは、別々に判断されます。一方があるから他方が消える、という関係ではありません。もっとも、当然に差し引かれるわけでもなく、実務では双方の請求をまとめて清算する形の合意で終えることが多くなります。
実行された後も要求が続いている場合
実行された後に要求が止まるとは限りません。「まだ言っていない先」が残っている限り、同じ構図が続くためです。会社の次は親、その次は共通の知人やSNS、という形で届け先が移っていくことがあります。
このとき、区切りを付けたい一心で支払いに応じても、届け先が残っている限り、同じことが繰り返される可能性があります。実行された後こそ、その場で結論を出さず、やり取りの窓口を一本化することが意味を持ちます。
実行された直後にしておきたいこと
何が、誰に、いつ、どの手段で伝えられたかを記録する。 後から責任を問う場面でも、会社に説明する場面でも、この記録が出発点になります
会社や家族が受け取ったものを確保する。 メール、手紙、画面の記録などを、可能な範囲で保管しておきます
会社での説明は、確認できている事実の範囲にとどめる。 分からない点は分からないと伝えるほうが、後の説明と食い違わずに済みます
要求が続いている場合は返事を保留する。 その場で答えないこと自体が、次の条件を悪くしないための対応になります
かえって状況を悪くしやすい対応
同じ方法でやり返す。 相手の家族や職場へ連絡し返す行為は、今度はこちらが責任を問われる側に回る可能性があります
事実をすべて否定して押し通す。 後から覆ると、説明そのものの信用が失われ、会社での評価にも影響します
話を終わらせるために、確認しないまま支払う。 何がどこまで清算されたのかが書面で残っていないと、同じ話が蒸し返されることがあります
よくあるご質問
Q. 実行されてしまった以上、もう警察には相談できないのでしょうか。
そうとは限りません。告げた行為の評価は実行の有無だけで決まるものではなく、要求が続いている場合はなおさらです。相談の際は、いつ何を言われ、その後に何が起きたのかを時系列で整理して持参されると、話が早く進みます。
Q. 会社に伝えられた内容に、事実でない部分が含まれています。
事実でない部分と、事実である部分は分けて扱う必要があります。虚偽の内容が含まれている場合には、信用毀損・業務妨害の問題として検討する余地があります。まずは、伝えられた内容そのものを正確に把握することが先になります。
Q. 相手に慰謝料を請求すれば、こちらの支払いはなくなりますか。
自動的になくなるわけではありません。それぞれ別の請求として金額が判断されます。ただし交渉の場では、双方の請求を併せて調整し、一つの合意にまとめる形をとることがあります。
まとめ
「会社にばらす」「親に連絡する」という発言は、告げた時点で脅迫として問題になり得ます。実行されたかどうかで、その評価が消えるわけではありません
実行された後は、伝わった先への対処と、伝えた行為の責任追及という、性質の異なる二つの作業に分かれます
会社に伝えられた場合、私生活上の行為がそれだけで処分に直結するわけではありませんが、業務や職場との接点があると評価が変わり得ます
家族に直接伝えられた場合、取り戻す手続はありませんが、宛先が一人であっても民事上の責任が認められた裁判例があります
責任を問う側には期間の制限があり、特に刑事の名誉毀損は犯人を知った日から6か月以内の告訴が必要です
実行された後も要求が続く場合、届け先が残っている限り同じ構図が続きます。その場で結論を出さず、窓口を一本化することが有効です
この記事の監修者
若井 亮(わかい りょう)
代表弁護士 弁護士法人若井綜合法律事務所(東京弁護士会所属)
男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の脅迫的な言動にも毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために尽力している。
弁護士法人若井綜合法律事務所
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当事務所は、恐喝・脅迫被害をはじめとする男女間のトラブルを数多く取り扱ってまいりました(男女トラブルのご相談は類型23,000件以上お受けしてまいりました)。「家族や勤務先に影響が及ばないように」という点に最大限配慮しながら、内密かつ穏便な解決を最優先に対応いたします。すでに個人情報を知られてしまっている場合や、要求がエスカレートしている場合も、状況に応じて被害の拡大を防ぐ手立てがあります。
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