熱中症搬送、初の10万人超え 2025年の猛暑を月別データで振り返る
熱中症搬送、初の10万人超え

総務省消防庁が10月29日に発表した確定値によると、2025年5〜9月の熱中症による全国の救急搬送者数は10万510人となりました。2008年の調査開始以来、初めて10万人を超えています。前年より2,932人多くなりました。この数字を受け、現場では冷却ベストなど「着るだけで対策できる」暑熱対策グッズへの関心も高まっています。搬送者数の増減を月ごとに見ていくと、今年の夏がどのように厳しさを増していったのかが見えてきます。
月別データで見る、10万人までの推移

月別に見ると、5月は2,614人だったのに対し、6月は17,229人まで増加しています。6月としては調査開始以降で最も多い数字です。今年は多くの地方で梅雨明けが統計開始以来最も早く、6月後半から猛暑日が相次いだことが背景にあります。例年であれば本格的な暑さの手前の時期にあたる6月から、すでに真夏並みの搬送者数が出ていたことになります。
搬送者数が最も多かったのは7月で39,375人でした。8月も31,526人となり、この2カ月で全体の約7割を占めています。気象庁によると2025年夏(6〜8月)の平均気温偏差は+2.36℃で、1898年の統計開始以降で最も高い値だったとのことです。連日の猛暑日が続いたことで、屋外作業や通勤・通学など日常の場面でも体調を崩す人が増えました。
9月も搬送者数は9,766人と、月別では過去2番目の水準でした。5月から9月まで落ち着く月がなく、153日間で単純に割ると1日あたり約657人が熱中症で救急搬送された計算になります。残暑が長引いたことで、朝晩が涼しくなり始める時期にも油断できない状況が続きました。気温だけでなく湿度の高さが重なった日も多く、体感的な暑さが長期間解消されなかったことも、搬送者数が高止まりした要因のひとつと見られます。
高齢者が6割近く、発生場所は屋外より「住居」が最多
年齢別では65歳以上の高齢者が57,433人で全体の57.1%を占めており、この構成比はここ数年ほぼ変わっていません。発生場所別で最も多かったのは屋外ではなく「住居」で38,292人(38.1%)でした。搬送直後に死亡が確認されたのは117人です。屋外の作業現場に限らず、自宅や職場の室内でも熱中症は起きています。エアコンを使わない、あるいは室温の変化に気づきにくい環境で長時間過ごすことが、住居での発生が多い一因と考えられます。高齢の家族と離れて暮らしている場合は、こまめな連絡や室温の確認を習慣にしておくことも、日頃からできる備えのひとつです。
義務化された職場対策と、冷却ベストという選択肢

2025年6月1日には、職場での熱中症対策を義務づける改正労働安全衛生規則が施行されました。WBGT(暑さ指数)が一定基準を超える環境では、作業時間の短縮や小まめな休憩、水分・塩分の補給、報告体制の整備などが求められます。具体的には、WBGT値を測定して基準を超えた場合は連続作業を短時間に区切ること、涼しい休憩場所を確保すること、体調変化にすぐ気づける声かけの仕組みを作ることなどが挙げられます。
こうした対応の中で、建設・物流・製造・農業など屋外や高温環境での作業が多い現場では、着用するだけで体感温度を下げられる冷却ベストの導入も進んでいます。休憩のたびに冷却剤を用意したり、機器の充電を管理したりする手間がかからない点が、現場担当者にとって扱いやすさにつながっているようです。作業着の下に着られる薄手のタイプも増え、動きにくさを理由に敬遠されにくくなっている点も、導入が広がっている背景のひとつといえます。
導入のハードルが低いのは、空調服のようなバッテリー充電が不要で、保冷剤タイプのような冷蔵庫・冷凍庫での事前冷却も必要としないタイプです。なかでもPCM(相変化材料)を使ったベストは、約28℃で固体と液体が入れ替わる性質を利用し、体温や外気の熱を吸収しながら快適な温度を保ち続けます。電源も冷凍庫も使わず、水に浸すだけで繰り返し使えるため、電源や設備がない屋外現場、出張先、移動中の車内でも、そのまま使い始められます。
休憩ルールの徹底やWBGT測定といった基本の対策に、こうした冷却ベストを組み合わせれば、現場での負担はさらに減らせます。7月・8月に搬送者数が集中した今年のデータを踏まえると、本格的な暑さが来る前の6月のうちに準備しておくことが、来年に向けた課題として残ります。気温の傾向が年々厳しくなっている以上、暑さが本格化してから対応を検討するのではなく、早めの時期から現場や家庭で使える対策を整えておくことが求められています。