世界の転移性非小細胞肺がんの市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界の転移性非小細胞肺がんの市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Metastatic Non-small Cell Lung Cancer Market Size; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
本レポートは、転移性非小細胞肺がん(Metastatic Non-Small Cell Lung Cancer:mNSCLC)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。NSCLCは肺がん全体の約80~85%、資料冒頭では約85%を占める最も主要な肺がん病型であり、そのうち遠隔臓器へ転移した進行病期がmNSCLCに相当する。肺がんは世界的ながん死亡の主要原因で、2022年には約180万人が死亡したとされる。調査会社は、NSCLC患者のかなりの割合が依然として進行・転移期で診断されることから、mNSCLCの疾患負担は今後も大きいとみている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、有病・発症状況、年齢、性別、病型、診断患者数などを分析している。
mNSCLCは、肺組織から発生した悪性腫瘍細胞がリンパ行性または血行性に広がり、脳、肝臓、骨、副腎などの遠隔臓器へ転移した状態を指す。NSCLCは組織学的に、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどを中心に構成される。これらはいずれも小細胞肺がんとは異なる生物学的・治療学的特徴を持つが、遠隔転移が生じると病態は複雑化し、局所治療だけでは十分な疾患制御が困難になる。
発症には、たばこ喫煙が重要な危険因子として関与するほか、環境汚染、職業性発がん物質への曝露なども関連するとされる。また、NSCLCではEGFR、ALK、ROS1などの遺伝子異常が治療選択に強く影響するため、現在のmNSCLC管理では単なる組織型分類だけでなく、分子プロファイルによる患者層別化が非常に重要となっている。
疫学的には、Feiyang Liらの2025年の報告によると、NSCLCは肺がん全体の80~85%を占め、その相当数が進行期で診断される。とくに高齢患者では、50~60%が進行病期で受診するとされており、高齢者におけるmNSCLC負担の大きさが示されている。
年齢との関連は非常に強い。Feiyang Liらによると、NSCLC患者のおよそ半数は70歳以上で診断される。高齢者では早期診断が難しいことや、症状が他の慢性呼吸器疾患などと重なることもあり、診断時にすでに進行・転移している割合が高いとされる。
この年齢構成は2026~2035年の市場動向に大きく影響する。米国、欧州、日本などで人口高齢化が進めば、NSCLCを発症する高齢者の絶対数が増え、それに伴って転移性患者数も増加する可能性がある。
予後は進行病期で大きく悪化する。Sarah Walianyらの2024年の報告によると、NSCLC全体の5年生存率は約25%であるのに対し、mNSCLCでは約7%に低下する。つまり、遠隔転移の有無が長期生存に大きく影響している。
この約7%という5年生存率は、mNSCLCが依然として高死亡率のがんであることを示す一方、患者ごとの予後には大きな差がある。分子標的治療が可能な遺伝子異常を持つ患者や、免疫療法に良好な反応を示す患者では、従来より長期生存が得られる場合もある。
性別では、近年の肺がん患者数は男女で比較的近い。Gregory J. Rielyらの2024年の報告では、米国で2024年に新たに診断される肺・気管支がんは約234,580例と予測され、その内訳は男性116,310例、女性118,270例であった。したがって、肺がん全体ではほぼ均衡した男女分布となっている。
ただし、これはmNSCLC単独の男女別患者数ではなく、肺・気管支がん全体の統計である点に注意が必要である。mNSCLCの性別分布は、NSCLC比率、診断時病期、組織型、分子異常などによってさらに変化する可能性がある。
死亡負担も大きい。Gregory J. Rielyらによると、米国では2024年に肺・気管支がんによる死亡が約125,070人と予測されている。これも肺がん全体の死亡数であり、mNSCLCだけの死亡数ではないが、進行・転移性肺がんが大きな割合を占めることを考えると、mNSCLCが死亡負担の中心的な部分を担っていると考えられる。
世界的には、David E. Midthunの2024年の報告で、2020年に肺がんは約220万人に発症し、約180万人が死亡したとされる。資料冒頭では2022年の死亡数として約180万人という数字も示されており、年次は異なるものの、肺がん死亡が世界的に非常に大きいことは共通している。
米国では年間約23万5,000例の新規肺がんと12万5,000人超の死亡が報告される規模であり、その大部分がNSCLCである。さらに、NSCLC患者のかなりの割合が進行期で診断されるため、mNSCLCの絶対患者数も大きい。
日本では、Yuya Yokochiらの2025年の報告によると、肺がんの約90%をNSCLCが占めるとされる。この割合は一般的な世界推定80~85%よりやや高いが、いずれにしても日本の肺がんの大多数がNSCLCであることを示している。
日本は高齢化が進んでいるため、高齢NSCLC患者の増加がmNSCLC患者数にも影響する可能性がある。一方で、EGFR変異など特定の分子異常を持つ患者が一定数存在するため、分子標的治療の対象患者比率が欧米と異なる可能性があり、治療市場の構成も地域によって異なる。
スペインでは、Mariano Provencioらの2025年のレジストリ研究で、ステージIV NSCLC患者13,583例が記録されている。この数字は、欧州の一国でもmNSCLCがかなり大きな診療負担を形成していることを示している。
ドイツ、フランス、イタリア、英国については、提示資料ではmNSCLC単独の具体的患者数は示されていないが、肺がん発症数自体が大きく、進行期診断も一定割合存在するため、転移性患者集団は重要である。
インドでも肺がんの負担は増加傾向とされる。人口規模が非常に大きいことに加え、診断時に進行病期で発見される患者が多い場合、mNSCLCの絶対数も大きくなる可能性がある。
ここで重要なのは、本レポートで示される疫学数値の多くが「肺がん全体」あるいは「NSCLC全体」に関するものであり、mNSCLCだけを直接示すものではない点である。たとえば世界220万人の肺がん患者、180万人の死亡、米国234,580例、日本のNSCLC約90%などは、mNSCLCそのものの患者数ではない。
mNSCLC市場を正確に評価するには、肺がん全体からNSCLCを抽出し、さらにその中から診断時に遠隔転移を有する患者と、初期治療後に転移再発した患者を分けて考える必要がある。
市場・疫学上の最大の課題の一つは、遅い病期で診断される患者が依然として多いことである。肺がんは初期に症状が乏しいことがあり、咳、息切れ、倦怠感などの症状が出ても他の呼吸器疾患と考えられやすい。そのため、発見時にはすでに遠隔転移を伴うことがある。
特に高齢患者では、50~60%が進行病期で診断されるというデータが示されており、早期診断の改善がmNSCLC負担を減らすうえで重要となる。
一方、診断技術の進歩によって、従来は一括して「進行NSCLC」とされていた患者が、分子異常別に細かく分類されるようになっている。EGFR、ALK、ROS1などのドライバー遺伝子異常を検査することで、患者ごとに異なる標的治療を選択できる。
このため、現代のmNSCLCでは「転移性NSCLC」という一つの疾患カテゴリーだけで治療を決めるのではなく、組織型、遺伝子変異、免疫関連バイオマーカー、患者全身状態を組み合わせて治療を決定する。
治療の目的は、転移病変を完全に外科切除することではなく、全身の病勢を制御し、症状を軽減し、生存期間を延長することである。したがって、全身療法が治療の中心となる。
化学療法は現在も重要な治療選択肢であり、腫瘍の組織型や患者状態に応じて使用される。特に特定のドライバー遺伝子異常がない患者では、免疫療法との併用などで重要な役割を持つ。
分子標的治療は、EGFR、ALK、ROS1などの異常を持つ患者に対して用いられる。これらの治療は、腫瘍増殖を駆動する特定の分子経路を狙うことで、従来型化学療法より高い奏効を得られる場合がある。
したがって、mNSCLCでは診断時の分子検査が非常に重要である。治療開始前に適切なバイオマーカーを同定できなければ、有効な標的治療の機会を逃す可能性がある。
免疫チェックポイント阻害薬も治療を大きく変えた。これらは腫瘍が免疫系から逃避する機構を解除し、患者自身の免疫反応によってがん細胞を攻撃させることを目的とする。
一部の患者では免疫療法単独が用いられる一方、他の患者では化学療法との併用が選択される。資料でも、免疫療法と化学療法を組み合わせることで臨床転帰の改善を目指す戦略が挙げられている。
放射線療法は、転移性疾患において局所症状を緩和する目的で重要である。骨転移による疼痛、脳転移による神経症状などに対して用いられ、患者の生活の質を改善する。
また、一部の限られた転移病変では、局所治療をより積極的に組み合わせる場合もあるが、今回の資料ではそうした詳細な患者選択基準までは示されていない。
治療選択には患者の全身状態も重要である。mNSCLC患者は高齢者が多く、心血管疾患、COPD、腎機能低下などを併存することがあるため、治療強度は個別化する必要がある。
市場の観点では、mNSCLCは非常に大きなオンコロジー市場を形成している。患者数が多いだけでなく、化学療法、分子標的薬、免疫療法、放射線治療、遺伝子検査など複数の医療領域が関与する。
特に分子標的薬と免疫療法の普及によって、mNSCLC市場は単純な「化学療法市場」から、バイオマーカー別に細分化された精密腫瘍学市場へ移行している。
治療進歩によって長期生存する患者が増えれば、mNSCLCの有病患者数も増える可能性がある。つまり、新規転移症例数が大きく変わらなくても、治療によって患者が長期間生存することで、治療中の患者プールが蓄積することがあり得る。
一方、肺がん検診や早期診断が普及し、早期病期で治療される患者が増えれば、診断時mNSCLC患者数を減らす方向に作用する。このため2026~2035年の疫学には、「高齢化や患者長期生存による増加」と「早期診断改善による進行例減少」という相反する要因が作用する可能性がある。
全体として本レポートは、mNSCLCを「肺がんの約80~85%を占めるNSCLCの進行病期であり、遠隔転移によって5年生存率が約7%まで低下する、世界的に大きな死亡・治療負担を持つ疾患」と位置づけている。
NSCLC患者の約半数は70歳以上で診断され、高齢患者の50~60%が進行病期で受診するとされることから、高齢化と遅い診断がmNSCLC患者数を押し上げる重要な要因となっている。
米国では2024年に肺・気管支がん約234,580例、死亡約125,070人が予測され、男女の患者数はほぼ均衡している。日本では肺がんの約90%がNSCLCとされ、スペインではステージIV NSCLC患者13,583例を含むレジストリデータが報告されている。これらの数値は、主要市場全体で転移性NSCLCが依然として大きな疾患負担を形成していることを示している。
2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、人口高齢化、喫煙・環境リスクへの累積曝露、遅い病期での診断、治療進歩による患者生存期間延長が患者プールを拡大する要因になる。一方で、検診や画像診断の改善によって早期診断が増えれば、初診時転移患者の割合を減少させる可能性もある。
したがって、今後のmNSCLC管理における中心的課題は、肺がんをできるだけ早い病期で発見して転移性疾患への進展を減らすこと、転移性と診断された場合には組織型とEGFR、ALK、ROS1などの分子異常を速やかに評価すること、バイオマーカーに応じて標的治療、免疫療法、化学療法を適切に選択すること、そして脳・骨などの転移病変に対して放射線療法を含む局所治療を組み合わせることである。2026~2035年は、mNSCLCを単なる「末期肺がん」として一括して扱うのではなく、分子プロファイルと免疫学的特徴に応じて細分化し、精密医療によって長期生存を目指すことが、臨床・市場双方の主要テーマになるとまとめられる。
※目次構成
01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件
02
エグゼクティブサマリー
03
転移性非小細胞肺がん市場概要(8主要市場)
3.1 転移性非小細胞肺がん市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 転移性非小細胞肺がん市場の予測市場規模(2026年~2035年)
04
転移性非小細胞肺がん疫学概要(8主要市場)
4.1 転移性非小細胞肺がん疫学状況(2019年~2025年)
4.2 転移性非小細胞肺がん疫学予測(2026年~2035年)
05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断
5.7 転移性非小細胞肺がんの種類
06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因
07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 転移性非小細胞肺がんの診断済み有病患者数
7.4 種類別の転移性非小細胞肺がん患者数
7.5 性別別の転移性非小細胞肺がん患者数
7.6 年齢別の転移性非小細胞肺がん患者数
08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における前提条件および根拠
8.2 米国における転移性非小細胞肺がんの診断済み有病患者数
8.3 米国における種類別の転移性非小細胞肺がん患者数
8.4 米国における性別別の転移性非小細胞肺がん患者数
8.5 米国における年齢別の転移性非小細胞肺がん患者数
09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における前提条件および根拠
9.2 英国における転移性非小細胞肺がんの診断済み有病患者数
9.3 英国における種類別の転移性非小細胞肺がん患者数
9.4 英国における性別別の転移性非小細胞肺がん患者数
9.5 英国における年齢別の転移性非小細胞肺がん患者数
10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける前提条件および根拠
10.2 ドイツにおける転移性非小細胞肺がんの診断済み有病患者数
10.3 ドイツにおける種類別の転移性非小細胞肺がん患者数
10.4 ドイツにおける性別別の転移性非小細胞肺がん患者数
10.5 ドイツにおける年齢別の転移性非小細胞肺がん患者数
11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける前提条件および根拠
11.2 フランスにおける転移性非小細胞肺がんの診断済み有病患者数
11.3 フランスにおける種類別の転移性非小細胞肺がん患者数
11.4 フランスにおける性別別の転移性非小細胞肺がん患者数
11.5 フランスにおける年齢別の転移性非小細胞肺がん患者数
12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける前提条件および根拠
12.2 イタリアにおける転移性非小細胞肺がんの診断済み有病患者数
12.3 イタリアにおける種類別の転移性非小細胞肺がん患者数
12.4 イタリアにおける性別別の転移性非小細胞肺がん患者数
12.5 イタリアにおける年齢別の転移性非小細胞肺がん患者数
13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける前提条件および根拠
13.2 スペインにおける転移性非小細胞肺がんの診断済み有病患者数
13.3 スペインにおける種類別の転移性非小細胞肺がん患者数
13.4 スペインにおける性別別の転移性非小細胞肺がん患者数
13.5 スペインにおける年齢別の転移性非小細胞肺がん患者数
14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における前提条件および根拠
14.2 日本における転移性非小細胞肺がんの診断済み有病患者数
14.3 日本における種類別の転移性非小細胞肺がん患者数
14.4 日本における性別別の転移性非小細胞肺がん患者数
14.5 日本における年齢別の転移性非小細胞肺がん患者数
15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける前提条件および根拠
15.2 インドにおける転移性非小細胞肺がんの診断済み有病患者数
15.3 インドにおける種類別の転移性非小細胞肺がん患者数
15.4 インドにおける性別別の転移性非小細胞肺がん患者数
15.5 インドにおける年齢別の転移性非小細胞肺がん患者数
16
患者経路
17
治療課題および未充足ニーズ
18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察
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