「痔だと思っていた」「便が出ているから大丈夫」は要注意? 大腸がんを防ぐために知っておきたい「ポリープ・便潜血・大腸カメラ」の関係

2026-10-12 16:23
池袋ふくろう消化器内科・内視鏡 クリニック東京豊島院

「便に血がついたけれど、たぶん痔だろう」

「毎日便が出ているから、大腸は問題ないはず」

「健康診断で便潜血が陽性だったけれど、特に症状もないし……」

このように、便やお腹の変化を「よくあること」と考えて、そのままにしていませんか?

実は、大腸がんは早い段階では自覚症状がほとんどないことがあります。

厚生労働省が2026年1月に公表した2023年の全国がん登録によると、2023年に新たに大腸がんと診断された人は15万4,039人。男女を合わせると、大腸がんは部位別で最も罹患数が多いがんとなっています。

では、大腸がんから身を守るためには何をすればよいのでしょうか。

医療法人社団アイメッド 池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院の院長・柏木宏幸医師(消化器病専門医・消化器内視鏡専門医・総合内科専門医)が、大腸がんの予防・早期発見について解説します。

■元動画はこちら:https://www.youtube.com/watch?v=y1L9V53rYWg

大腸がんの「始まり」になることがある大腸ポリープ

大腸ポリープとは、大腸の内側を覆う粘膜が盛り上がったものの総称です。

「ポリープが見つかったら、もう大腸がんなのでは?」

そう思う方もいるかもしれません。

しかし、ポリープがすべてがんというわけではありません。

なかでも重要なのが「腺腫(せんしゅ)」と呼ばれるタイプです。

腺腫は、見つかった時点では良性であることが多いものの、時間の経過とともに一部ががんへ変化することがあります。

そのため、

ポリープの段階で発見し、必要に応じて切除することは、大腸がんの予防につながる重要な手段の一つです。

実際、米国のNational Polyp Study(2012年、医学誌N Engl J Medに報告)では、腺腫性ポリープを内視鏡で切除した人を長期間追跡したところ、一般人口から予測される大腸がん死亡数と比較して、大腸がんによる死亡が53%少なかったと報告されています。

ただし、ここで注意したいことがあります。

すべての大腸がんがポリープから発生するわけではありません。

平坦な病変など、見つけにくいタイプから発生する大腸がんもあります。

また、一度ポリープを切除したからといって、その後ずっと大腸がんのリスクがなくなるわけでもありません。

そのため、次回の検査時期については、ポリープの種類や大きさ、個数などを踏まえて、担当医に確認することが大切です。

「症状がないから大丈夫」は大腸がんの早期発見では危険

大腸がんで特に注意したいのが、早期には症状が出ないことが少なくないという点です。

国立がん研究センターも、早期の大腸がんは自覚症状がないことが少なくなく、症状がないうちに検診を受けることが重要だとしています。

「毎日便が出ている」

「お腹が痛くない」

というだけでは、大腸がんがないとは判断できません。

そこで、次のような変化が続いていないか確認してみましょう。

1.便に血がつく・血が混じる

「血が出たけれど、痔があるから大丈夫」

と自己判断してしまうケースは少なくありません。

しかし、痔がある人でも大腸がんになることはあります。

また、血の色だけで、痔なのか大腸の病気なのかを判断することもできません。

便に血がつく、血が混じる状態が繰り返される場合は、「痔だろう」と決めつけず、医療機関に相談することが大切です。

2.便通や便の状態が変わった

例えば、

急に便秘になった

便秘と下痢を繰り返す

便が以前より細くなった

排便後も残便感がある

といった変化です。

もちろん、これらの症状があれば必ず大腸がんというわけではありません。

大切なのは、「普段と違う状態が長く続いているか」ということです。

3.原因の分からない鉄欠乏性貧血

大腸の右側にできた病変では、出血していても便に血が混じっていることが分かりにくい場合があります。

その結果、少しずつ出血が続き、鉄欠乏性貧血につながることがあります。

健康診断などで「貧血」と指摘され、原因がはっきりしない場合には、単に鉄分を補うだけではなく、なぜ鉄が不足しているのかを調べることも重要です。

こんな症状がある場合は、検診を待たずに受診を

大腸がん検診は、基本的に症状のない人を対象としたものです。

一方、

血便

腹痛

便の性状や排便回数の変化

などの症状がある場合は、次の検診を待つのではなく、医療機関を受診することが勧められています。

さらに、意図しない体重減少や強い腹痛、お腹の張りが続く、吐き気・嘔吐があり便やガスが出ない、といった症状がある場合も、早めに医療機関へ相談しましょう。

大腸がんのリスクは「年齢」だけでは決まらない

大腸がんには、さまざまな要因が関係しています。

代表的なものとして、

年齢

家族歴

喫煙

飲酒

肥満

運動不足

食生活

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

などが挙げられます。

そのため、「これさえやめれば大腸がんにならない」という単純なものではありません。

一方で、日々の生活の中で見直せるポイントもあります。

加工肉や赤肉に偏った食生活を見直す

国際がん研究機関(IARC)は、加工肉を「ヒトに対して発がん性がある(グループ1)」、赤肉(牛肉・豚肉・羊肉など)を「おそらくヒトに対して発がん性がある(グループ2A)」と分類しています。

これは「肉を食べてはいけない」という意味ではありません。

例えば、毎日のように加工肉を食べている場合には、魚や豆類など別の食品を取り入れる日を作るなど、食生活全体のバランスを見直すことが考えられます。

まずは今より10分多く体を動かす

運動習慣も、大腸がんとの関連が研究されています。

いきなり激しい運動を始める必要はありません。

「いつもより10分多く歩く」など、今の生活に無理なく加えられることから始めるのも一つの方法です。

「腸活しているから大丈夫」は危険? 注目される腸内細菌研究

近年、大腸がんと腸内細菌の関係にも注目が集まっています。

2024年に『Nature』で発表された研究では、口腔内にも存在する「Fusobacterium nucleatum(フソバクテリウム・ヌクレアタム)」の特定の系統が、大腸がんの腫瘍組織で多く確認されました。

さらに、マウスを使った研究では、この特定の系統を投与したマウスで大腸の腺腫が増加したことが報告されています。

ただし、ここは誤解してはいけないポイントです。

「この細菌があるから大腸がんになる」「この細菌をなくせば大腸がんを予防できる」と現時点で言えるわけではありません。

腸内細菌と大腸がんの関係は現在も研究が進められている分野です。

腸内環境を意識すること自体は健康管理の一環として考えられますが、腸活だけで大腸がん検診の代わりになるわけではありません。

40歳から始めたい「大腸がん検診」

では、実際に何をすればよいのでしょうか。

現在、日本の公的な大腸がん検診は、40歳以上を対象に1年に1回、便潜血検査を受けることが基本です。

便潜血検査は、便に混じった目に見えない血液を調べる検査です。

大腸がんやポリープなどがある場合、病変から出血することがあります。

ただし、出血は毎回起こるとは限りません。

そのため、一般的な大腸がん検診では2日分の便を採取する「便潜血検査2日法」が行われています。

便潜血が「陽性」だったら?

ここが非常に重要です。

便潜血検査で「要精密検査」となった場合、

「痔のせいだろう」

「もう一度便潜血を受けて、陰性なら大丈夫」

と自己判断してはいけません。

国立がん研究センターも、便潜血検査が1日分でも陽性になった場合は精密検査を受ける必要があり、便潜血検査をもう一度受けることは精密検査の代わりにはならないとしています。

大腸がんは毎日出血しているとは限らないためです。

つまり、

「今回だけ陽性だった」=「問題ない」

とは判断できません。

便潜血陽性の場合、一般的な精密検査として大腸内視鏡検査が行われます。

便潜血検査と大腸カメラは「どちらか」ではない

「大腸カメラを受ければ、便潜血検査は必要ないのでは?」

と思う方もいるかもしれません。

しかし、両者は役割が異なります。

便潜血検査は、大腸がん検診として症状のない人が定期的に受ける検査。

一方、

大腸内視鏡検査は、大腸の内部を直接観察し、必要に応じて組織検査やポリープの切除などを行う検査です。

特に、便潜血検査で「要精密検査」となった場合は、大腸内視鏡検査などによる精密検査につなげることが重要です。

「40歳」は一つのチェックポイント

大腸がんは40歳代から罹患する人が増えていきます。

そのため、これまで大腸内視鏡検査を受けたことがない人は、年齢だけで一律に検査を決めるのではなく、

症状の有無

家族歴

これまでの検査結果

既往歴

検査による利益と負担

などを踏まえて、医師に相談することが大切です。

特に、家族に大腸がんになった人がいる場合や、血便・貧血など気になる症状がある場合には、40歳を待たずに医療機関への相談が必要になることもあります。

今日からできることは「検診結果を確認する」こと

大腸がん対策というと、

「食生活を変えなければ」

「運動を始めなければ」

と考えてしまうかもしれません。

もちろん、生活習慣を見直すことは大切です。

しかし、柏木院長がまず確認してほしいと話すのは、「自分の検診結果」です。

最後に、次の3つを確認してみましょう。

□ 今年、大腸がん検診を受けましたか?

40歳以上の方は、1年に1回の大腸がん検診が基本です。

□ 便潜血検査が「要精密検査」になっていませんか?

陽性だった場合は、自己判断で再検査をするのではなく、精密検査を受けましょう。

□ 血便・便通の変化・腹痛などが続いていませんか?

症状がある場合は、次回の検診を待つのではなく、医療機関へ相談しましょう。

大腸がんは、早期には症状がないことがあります。

だからこそ、「症状がないから大丈夫」ではなく、症状がない時期から検診を受けることが大切です。

また、ポリープなどの病変を早い段階で見つけることが、その後の大腸がん対策につながる場合があります。

「痔だと思うから」

「便が出ているから」

「去年は大丈夫だったから」

と自己判断せず、気になる変化があれば専門医へ相談しましょう。

一人ひとりができることから、大腸がんの早期発見・早期治療につなげていくことが大切です。

柏木宏幸院長からのメッセージ

「症状がないから大丈夫」「痔だと思うから大丈夫」と決めつけず、まずは自分の検診結果を確認してみてください。

検査を受けて問題がなければ安心につながります。

もしポリープが見つかった場合には、将来の大腸がんリスクを減らすための対応につながることもあります。

大腸がんを必要以上に怖がるのではなく、正しい知識を持って、検査を受けるきっかけにしていただければと思います。

【クリニック概要】

院名:医療法人社団アイメッド 池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院
院長:柏木 宏幸(かしわぎ ひろゆき)/日本消化器病学会 消化器病専門医・日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・日本内科学会 総合内科専門医
所在地:〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-21-1 ラグーン池袋ビル6F
アクセス:池袋駅35番出口より徒歩3分/東池袋駅2番出口より徒歩5分
電話:03-5992-5577
公式HP:https://www.ikebukuro-cl.com/
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