世界の機能性ディスペプシアの市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表

2026-09-07 12:00
株式会社マーケットリサーチセンター

株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界の機能性ディスペプシアの市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Functional Dyspepsia Epidemiology Forecast; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。

■主な掲載内容

本レポートは、機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。FDは、明らかな器質的異常が認められないにもかかわらず、食後膨満感、早期満腹感、心窩部痛などの上部消化管症状が持続・反復する慢性消化器疾患である。病型として、食後愁訴症候群(Postprandial Distress Syndrome:PDS)と心窩部痛症候群(Epigastric Pain Syndrome:EPS)が挙げられ、胃運動異常、内臓知覚過敏、胃適応性弛緩障害、腸脳相関の異常など複数の病態が関与するとされる。調査会社は、FDが生命を直接脅かす疾患ではない一方、QOL低下や医療利用の増加につながる頻度の高い慢性疾患であり、米国成人の約12%にみられると整理している。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間として、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場における有病率、年齢、性別、病型、診断患者数などを分析している。

まず重要なのは、「機能性消化管疾患全体」と「機能性ディスペプシア」を区別することである。資料では、機能性消化管疾患全体が世界人口の約40%に影響するとされる一方、FDそのものの世界有病率は約5~11%とされる。したがって、40%という数値をFD単独の有病率として扱うのは不適切である。

また、別の疫学研究ではFD有病率が8~23%とされ、さらに西洋諸国では10~40%という広い範囲が示されている。これらの数値はかなりばらついている。

このばらつきは、診断基準、症状質問票、調査対象、Rome基準の世代、器質疾患除外の程度などが異なることを反映している可能性が高い。したがって、「FDの世界有病率は正確に何%」と単一値に固定するのは適切ではない。

今回の資料の中では、世界有病率5~11%が比較的中心的な推定値として示される一方、8~23%や西洋10~40%という値は、より広い研究レンジとして扱うのが妥当である。

特に「西洋諸国10~40%」という上限40%は、世界の機能性消化管疾患全体約40%という記述と近く、FD単独としてはかなり高い。したがって、対象集団や症例定義が広い可能性があり、FDの一般人口有病率としてそのまま採用するには慎重さが必要である。

一方、北米・欧州の人口ベース研究では10~15%という有病率が示されており、この値は米国Rome IV調査の約12%とよく整合する。

米国では、1,949人を対象とした多国間調査でRome IV基準を適用した結果、成人の約12%がFDに該当したとされる。

ここで重要なのは、12%が「米国成人全体に必ず同じ比率で存在することを確定した全国患者数」ではなく、1,949人の調査サンプルにおける推定である点である。

したがって、米国成人の約12%という値は有用な代表推定ではあるが、サンプリング方法やRome IV基準の適用によって変動し得る。

また、北米・欧州全体で10~15%、米国で約12%という関係は大きな矛盾はない。

年齢では、FDはどの年齢でも起こり得るが、若年~中年成人でより多いとされる。

資料では、加齢とともに有病率がやや低下する傾向があるとされる。

その理由として、高齢者では同様の上腹部症状があっても、消化性潰瘍、悪性腫瘍、胆道疾患など器質的疾患として診断される割合が増え、機能性疾患として分類されにくくなる可能性が示されている。

したがって、「高齢になるとディスペプシア症状そのものが必ず減る」という意味ではない。高齢者では症状の背景に器質疾患が見つかる割合が高くなるため、FDとしての診断割合が低下する可能性があるということになる。

この点は疫学解釈上重要であり、若年者と高齢者で同じ上腹部症状があっても、最終診断の構成が異なる可能性がある。

性別では、FDは男性より女性に多く、女性:男性比は約1.5~2:1とされる。

つまり、女性は男性の約1.5~2倍程度FDと診断される可能性があるということになる。

資料では、その背景としてホルモン機序、疼痛シグナルの性差、医療機関受診行動の違いなどが挙げられている。

ただし、これらは必ずしも確定した単一原因ではない。

特に医療受診行動が影響する可能性があるため、診断患者に女性が多いことがそのまま生物学的発症率だけの差を意味するとは限らない。

したがって、「FDは女性に多い」という疫学的傾向は支持されるが、その理由をホルモンだけに帰するべきではない。

地域差では、資料は東アジア・東南アジアで高い有病率が報告される場合があるとしている。

その関連要因として、食事パターン、Helicobacter pylori感染率、心理社会的ストレスなどが挙げられている。

ただし、これらは地域差を説明し得る関連要因として示されているにすぎず、個々の要因がFD発症を直接決定する因果関係として証明されているわけではない。

また、資料冒頭では西洋諸国で10~40%と高いとされる一方、別の記述では東・東南アジアで特に高いとされており、地域的な「どこが最も高いか」という点にはやや一貫性を欠く。

このため、FD有病率の地域差は、純粋な生物学的地域差というより、調査方法、診断基準、症状認識、H. pylori、食事、受診行動など複数因子に左右されると理解するのが適切である。

今回の抜粋では、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドについて、FDに特異的な具体的国別患者数や有病率は提示されていない。

したがって、8主要市場を対象とするレポートではあるものの、この資料だけで各国のFD患者数を定量的に比較することはできない。

米国については約12%という具体的推定が示されているが、他の7市場には同等の国別数値がない。

FDの病型としては、PDSとEPSが挙げられる。

PDSでは食後膨満感や早期満腹感が中心となり、食後の胃内容受容や運動機能異常との関連が示唆される。

EPSでは心窩部痛や灼熱感が中心となる。

ただし、実臨床では両者が重複する患者も存在し得るため、PDS患者数とEPS患者数を単純に足してFD総数とする場合には注意が必要である。

今回の資料ではPDSとEPSの具体的構成比は示されていないため、病型別患者割合の定量化はできない。

病態としては、胃運動異常、内臓知覚過敏、胃適応性弛緩障害、腸脳相関異常などが挙げられている。

このことからも、FDは単一病態ではなく、多因子性疾患であることが分かる。

したがって、同じFD診断でも、ある患者では食後の胃運動障害が中心、別の患者では知覚過敏や心理社会的要因がより大きいなど、病態の個人差が大きい。

治療が一律に効きにくい背景にも、この多因子性がある。

H. pyloriについては、感染が確認され適応がある場合に除菌治療を行うとされる。

ここで重要なのは、H. pylori陽性ディスペプシアとFDを完全に同義と扱うべきではない点である。

資料ではH. pylori eradication when indicatedとされており、すべてのFD患者がH. pylori感染を有するわけではない。

治療の基本は症状と病態に応じた個別化である。

薬物療法としてプロトンポンプ阻害薬(PPI)、消化管運動改善薬、neuromodulatorsなどが挙げられている。

PPIは酸関連症状の軽減を目的とし、運動改善薬は胃排出や胃運動異常への対応として用いられる。

neuromodulatorsは内臓知覚過敏や腸脳相関の異常を背景とする患者で検討される。

ただし、今回の資料では具体的な薬剤名、第一選択・第二選択の順序、病型ごとの奏効率までは示されていない。

したがって、すべてのFD患者に同じ治療を一律に適用するわけではない。

食事調整も重要とされる。

FDでは特定食品や食事量、脂肪負荷などによって症状が増悪する患者がいるため、患者ごとに誘因を評価することが必要になる。

一方、心理的・腸脳相関要素が強い患者では、認知行動療法(CBT)などの心理的介入が有用な場合があるとされる。

これはFDを「心理疾患」とみなすという意味ではなく、消化管と中枢神経系の双方向性調節、すなわちgut-brain axisが病態に関与する患者で症状管理に役立つ可能性があるという位置づけである。

研究開発では、胃適応性弛緩や知覚過敏を標的とする新しい治療が検討されている。

ただし、今回の資料ではこれらは新規可能性として記載されており、確立した標準治療としての詳細は示されていない。

市場・疫学の観点では、FDは一般人口の数%から10%台に達する頻度の高い慢性疾患であり、患者数が非常に大きい一方、診断基準によって有病率が大きく変動することが最大の特徴である。

第一の将来患者数変動要因は診断基準と認知度である。

Rome基準の普及やプライマリケアでの認識向上によって、これまで「原因不明の胃もたれ」とされていた患者がFDとして診断される可能性がある。

第二に、H. pylori検査、内視鏡などの診断アクセスが向上すれば、器質疾患を除外した上でFDと診断される患者数が変化する可能性がある。

第三に、若年・中年女性での高い疾病負担が継続する可能性がある。

第四に、心理社会的ストレスや生活習慣の変化が症状負担に影響する可能性がある。

一方、高齢化がそのままFD患者増加につながるとは限らない。資料では年齢とともにFD有病率がやや低下するとされるためである。

ただし、これは高齢者で消化器症状が少ないという意味ではなく、器質疾患として分類される割合が増える可能性を反映する。

したがって、2026~2035年のFD市場では人口高齢化よりも、診断認知、Rome基準適用、女性・若年中年層の症状負担、治療アクセスなどの方が重要な変動要因になる可能性がある。

全体として本レポートは、FDを「明らかな器質的異常がないにもかかわらず、食後膨満感、早期満腹感、心窩部痛などが慢性的に持続する多因子性上部消化管疾患」と位置づけている。

世界有病率は約5~11%とされる一方、研究によって8~23%、西洋諸国で10~40%というより広いレンジも示される。これらは診断基準・対象集団の違いによるばらつきが大きく、単一の有病率として統一すべきではない。

北米・欧州では10~15%程度、米国ではRome IVを用いた1,949人の調査で約12%とされ、これらは比較的整合する。

性別では女性:男性比約1.5~2:1と明確な女性優位がみられ、年齢では若年~中年成人に多く、高齢になるとFDとしての有病率はやや低下する傾向がある。

ただし、この年齢低下は高齢者で器質疾患が増えることによる診断構成の変化を反映する可能性があり、消化器症状そのものが単純に減ることを意味しない。

治療ではPPI、H. pylori除菌が適応となる場合の除菌療法、消化管運動改善薬、neuromodulators、食事調整、心理的介入などを患者ごとに組み合わせる。PDSとEPSで症状構成が異なるため、病型や背景病態に応じた個別化が重要となる。

2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、FDそのものの真の発症率変化より、診断基準の標準化、プライマリケアでの認知向上、器質疾患除外の精度、患者の受診行動によって診断患者数が大きく変わる可能性がある。

したがって、今後のFD管理における中心的課題は、上腹部症状を一括してFDと診断するのではなく、まず器質疾患を適切に除外し、そのうえでPDS・EPSなどの症状パターン、H. pylori、胃運動、知覚過敏、腸脳相関の関与を評価し、個別化した治療につなげることである。2026~2035年は、頻度が高い一方で診断定義と病態の異質性が大きいFDについて、患者をどこまで精密に層別化し、長期症状コントロールとQOL改善を実現できるかが、臨床・疫学・消化器診療・研究開発・市場の主要テーマになるとまとめられる。

※目次構成

  1. 序文
    1.1 はじめに
    1.2 調査の目的
    1.3 調査方法および前提条件
  2. エグゼクティブサマリー
  3. 機能性ディスペプシアの市場概要 ― 8主要市場
    3.1 機能性ディスペプシアの市場規模実績(2019~2025年)
    3.2 機能性ディスペプシアの市場規模予測(2026~2035年)
  4. 機能性ディスペプシアの疫学概要 ― 8主要市場
    4.1 機能性ディスペプシアの疫学動向(2019~2025年)
    4.2 機能性ディスペプシアの疫学予測(2026~2035年)
  5. 疾患概要
    5.1 徴候および症状
    5.2 原因
    5.3 リスク因子
    5.4 ガイドラインおよび病期
    5.5 病態生理
    5.6 スクリーニングおよび診断
    5.7 機能性ディスペプシアの種類
  6. 患者プロファイル
    6.1 患者プロファイルの概要
    6.2 患者心理および心理・感情面への影響因子
  7. 疫学動向および予測 ― 8主要市場(2019~2035年)
    7.1 主な調査結果
    7.2 前提条件およびその根拠
    7.3 機能性ディスペプシアの診断済み有病患者数
    7.4 機能性ディスペプシアのタイプ別患者数
    7.5 機能性ディスペプシアの性別患者数
    7.6 機能性ディスペプシアの年齢別患者数
  8. 疫学動向および予測:米国(2019~2035年)
    8.1 米国における前提条件およびその根拠
    8.2 米国における機能性ディスペプシアの診断済み有病患者数
    8.3 米国における機能性ディスペプシアのタイプ別患者数
    8.4 米国における機能性ディスペプシアの性別患者数
    8.5 米国における機能性ディスペプシアの年齢別患者数
  9. 疫学動向および予測:英国(2019~2035年)
    9.1 英国における前提条件およびその根拠
    9.2 英国における機能性ディスペプシアの診断済み有病患者数
    9.3 英国における機能性ディスペプシアのタイプ別患者数
    9.4 英国における機能性ディスペプシアの性別患者数
    9.5 英国における機能性ディスペプシアの年齢別患者数
  10. 疫学動向および予測:ドイツ(2019~2035年)
    10.1 ドイツにおける前提条件およびその根拠
    10.2 ドイツにおける機能性ディスペプシアの診断済み有病患者数
    10.3 ドイツにおける機能性ディスペプシアのタイプ別患者数
    10.4 ドイツにおける機能性ディスペプシアの性別患者数
    10.5 ドイツにおける機能性ディスペプシアの年齢別患者数
  11. 疫学動向および予測:フランス(2019~2035年)
    11.1 フランスにおける前提条件およびその根拠
    11.2 フランスにおける機能性ディスペプシアの診断済み有病患者数
    11.3 フランスにおける機能性ディスペプシアのタイプ別患者数
    11.4 フランスにおける機能性ディスペプシアの性別患者数
    11.5 フランスにおける機能性ディスペプシアの年齢別患者数
  12. 疫学動向および予測:イタリア(2019~2035年)
    12.1 イタリアにおける前提条件およびその根拠
    12.2 イタリアにおける機能性ディスペプシアの診断済み有病患者数
    12.3 イタリアにおける機能性ディスペプシアのタイプ別患者数
    12.4 イタリアにおける機能性ディスペプシアの性別患者数
    12.5 イタリアにおける機能性ディスペプシアの年齢別患者数
  13. 疫学動向および予測:スペイン(2019~2035年)
    13.1 スペインにおける前提条件およびその根拠
    13.2 スペインにおける機能性ディスペプシアの診断済み有病患者数
    13.3 スペインにおける機能性ディスペプシアのタイプ別患者数
    13.4 スペインにおける機能性ディスペプシアの性別患者数
    13.5 スペインにおける機能性ディスペプシアの年齢別患者数
  14. 疫学動向および予測:日本(2019~2035年)
    14.1 日本における前提条件およびその根拠
    14.2 日本における機能性ディスペプシアの診断済み有病患者数
    14.3 日本における機能性ディスペプシアのタイプ別患者数
    14.4 日本における機能性ディスペプシアの性別患者数
    14.5 日本における機能性ディスペプシアの年齢別患者数
  15. 疫学動向および予測:インド(2019~2035年)
    15.1 インドにおける前提条件およびその根拠
    15.2 インドにおける機能性ディスペプシアの診断済み有病患者数
    15.3 インドにおける機能性ディスペプシアのタイプ別患者数
    15.4 インドにおける機能性ディスペプシアの性別患者数
    15.5 インドにおける機能性ディスペプシアの年齢別患者数
  16. ペイシェントジャーニー(患者の診療・治療プロセス)
  17. 治療上の課題およびアンメットニーズ
  18. キー・オピニオン・リーダー(KOL)の見解

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